スピリットウィング。

よく他のクラスのユーザー達は、スピリットウィングを丁重な埃と呼んだりします。
埃の様に目視出来ず、存在感が無いと言い、そんなニックネームを付けた様です。

ダメージディーリングが弱いという認識の為、ずっとパーティーから疎外されて来た寂しい彼ら。
そんな彼らが、3.0 パッチ以後、注目を集めています。

しかし、自分たちが注目されるのは、思いきり楽しくないと言うスピリットウィングユーザー達。

今日は、埃という悲しいニックネームを持ったスピリットウィングの哀歓と、
パッチ以後、彼らが注目される理由は何なのか、調べてみました。

●君逹はローブでは無いんじゃないの？

スピリットウィングは、精霊を召還し、代わりに闘う様にして、様々な DoT スキルを利用し、
累積ダメージを積んで相手を倒すダメージディーラーです。

2.5 パッチ前では、一モンスターに 8種類以上のデバフが掛からない制限がありました。
DoT スキルを利用してダメージを加えるスピリットウィングは 「必要無し」 と言われるシステムでした。

スピリットウィングが他のクラスユーザー達とパーティー狩りをする様になれば、
他のクラスのデバフが適用され、スピリットウィングの DoT スキルは直ぐ消えてしまいます。
その為、累積ダメージを与える事が出来なかったのです。

また、スペルウィングと違い、目に見える力強い魔法スキルが無いという事実と、
スペルウィングに比べて、心細いメズスキルしか無かった為、
スピリットウィングに対する認識は良いものではありませんでした。

こんな理由の為、スピリットウィングはパーティー狩りでこれと言う役目が出来なかったし、
他クラスユーザー達からも、良くない認識の為、パーティー狩りで疎外を受ける様になります。

2.5 パッチの時、初めてデバフ制限が解除され、新規スキルが追加されました。
スキル理解度が十分なユーザーは、他のクラスに劣らないダメージディーラーとして認識されましたが、
以前までのスピリットウィングに対する認識は簡単には変わらない上、
HP が少ないモンスターには、累積ダメージよりも一撃が強い魔法の方が強い為、
まだ、スピリットウィングたちは、パーティーで疎外を受ける現実が待っていました。

スピリットウィングユーザーは毎日泣いた。

認識が簡単には変わらないせいもあり、最近までスピリットウィングのパーティー狩りは、
祝福された者の特別な権利くらいに思っていました。

　- タンカー君 ： <パーティー募集> ローブ一人お願いします。
　- → ローブです。宜しくお願いします。
　- タンカー君 ： <パーティー募集> ローブ一人お願いします（スピリットウィングはwisしないで下さい）

[スピリットウィングなら一度は経験しただろう酷いパーティー募集の基準]

●スピリットウィングを悲しませる人々

しかし、パーティー拒絶よりもスピリットウィングたちをもっと悲しくするのは、
正しく上の様な種類のウィスパーを送るユーザー達です。

相手種族地域に行っている場合、いきなり

　- タンカー君 ： 相手種族地域にいるんでしょ？召還してよ。

夜 9時が近くなると、間違いなく

　- タンカー君 ： 火バフだけちょうだい。

3.0 パッチになって、最近は急激に

　- タンカー君 ： レントゥス基地募集。大事なスピリットウィング様募集です。

普段、パーティー募集に応募しても、ディーラー扱いすらしなかったユーザー達が、
自分たちが必要な時だけ、スピリットウィングユーザー達を求めるというのです。

相手種族地域に行っているスピリットウィングは 「タクシー」 というイメージを持たれ、
間違いなく初対面なユーザーからも、急に召還してくれと言ってウィスパーして来たり、
要塞戦時間帯になれば、少しでも多くのダメージディーリングを行う為、
スピリットウィングの 「ファイアブレス」 バフ効果を受けたいと思い、再びスピリットウィングにウィスパーして来ます。

※タクシー
　- 同じ地域内のパーティー員を召還する事が出来るスピリットウィングだけの召還スキルを利用して、
　　特定地域に召還し、謝礼を受けるスピリットウィングたちを称する隠語。
　　サブキャラクターでスピリットウィングを育成して、ギーナを儲けようとするユーザー達が
　　自らを低姿勢で呼んだ称号ではあるが、スピリットウィング全体を卑下する単語に変化した。

※ファイアブレス
　- スピリットウィングのスティグマスキルで、自分とパーティー員たちが攻撃する度に
　　100％ の確率でレベル別一定量の追加ダメージ効果を与えるスキル。

最近では、レントゥス基地でスピリットウィングが反射や隕石召還を無効化出来る為、
特に、レントゥスパーティー員募集文には、スピリットウィングを求めるパーティーが良く見られます。

しかし、こんな最近の囁きも、スピリットウィングをダメージディーラーとして認めて、というより、
ただ、自分たちの目的による、便利な利用道具としてだけ眺める視線が、
スピリットウィングユーザー達をもっと悲しく、もっと怒る様にしているというのです。

●ソロプレイの達人

こんな風に、ユーザー達はますますスピリットウィングとのパーティー狩りに対して、
良くない認識を持つ様になり、スピリットウィング本人たちでさえ、パーティー支援に対する意志が消え、
彼らは更に行く場所が無くなりました。

しかし、疎外されて認められる事が無かった自分たちの境遇を、嘆いてばかりいる事は出来ませんでした。
彼らにも、この状況を打開するに値する解決方案が必要でした。
彼らもゲームを楽しむユーザーであり、彼らも目標にする物などが存在したからです。

彼らは、ゲームシステムを分析し始めます。
モンスターが使うスキルのパターンと原理を分析して、
地形地物に対する生成原理も分析します。
そして、遂に、彼らだけのインスタンスダンジョン攻略方法を探し出す様になりました。
パーティー狩りでは無く、一人だけの力で、インスタンスダンジョンを攻略する様になったのです。

悲しみという単語と何だか似ているソロプレイ。

スピリットウィング掲示板には、今日もソロプレイに関わる掲示物が上がってくる。

努力の挙げ句、スピリットウィングは現在アイオンで一番必須インスタンスダンジョンであるアラカから、
最終インスタンスダンジョンと見られるレントゥス基地まで。
ソロプレイで攻略する事が出来ない場所は殆ど無くなりました。

パーティー狩りで疎外されるスピリットウィングたちは、自らの生計を用意したのです。
しかし、これもユーザー達の間で論難が起こる様になります。

●私がすればロマンス、他人がすれば不倫？

こんな現象に対して、一部ユーザー達はスピリットウィングたちを見て、
ただのバグプレイを悪用する底辺の群れだと後ろ指を差し始めたのです。

しかし、皮肉としか言いようが無く、スピリットウィングのダメージディーリングは弱いという偏見で排除したり、
バグだバグだと後ろ指を差したユーザー達も、3.0 パッチで登場したレントゥス基地パーティー募集をする時は、
自分たちが楽にインスタンスダンジョン攻略に必要だという理由で、
スピリットウィングを固執したり、スピリットウィングがいるパーティーに行く事を願います。

そんなユーザー達を見れば、もっと怒る様になるというスピリットウィングユーザー達。

スピリットウィング A ：
　- スピリットウィングを綺麗で無い視線で眺めるユーザー達に聞きたいです。
　　アラカや上層などのインスタンスダンジョン募集にスピリットウィングが募集したら、
　　隔たり無くパーティー申し込みを受けて貰えるのですか？

スピリットウィング B ：
　- バグプレイをしていると、私たちの悪口を言うユーザー達に聞きたいです。
　　あなた方はバグプレイを使って見た事が無いのですか？
　　スピリットウィングたちが一様にパッチを求める主張していた時、
　　無視してあざ笑わって居なかったのですか？

スピリットウィング C ：
　- あなた達がレントゥス基地に行く時にパーティーを構成する時は、スピリットウィングに欲しいと言いますが、
　　後ろ指を差していた人は反射を消して欲しくないって事ですよね？

"あなた達が、私たちに後ろ指を差す資格があるんですか？"

余りにも自分勝手な姿を見せる彼らですが、
もしかしたら、私たち皆が彼らをあの様に変えてしまったのかもしれません。

人々は、どんな仕事でも、もう少し早く、簡単に終わらせる事を好み、
誰もが自分に利得になる人を、側に置きたがります。

多くの理由に淘汰されて来たスピリットウィングユーザー達を悪い視線だけで見る前に、
自分自身がエゴな考えを抱いていたのではないか？
いざ、本人が同じ状況に置かれたら、どの様にしたのか？
スピリットウィングの立場で、今一度考えて見たらどうでしょう。

ゲーム中では動くキャラクターなだけかもしれませんが、
コンピューターの向こうでそれを操るのは間違いなく人です。

もう少し、余裕のある心で、皆が一緒に楽しむ、
相手をもう少し気配りする、アイオンになったらと思います。

●エピローグ

昔、深い山奥に、スピリットウィング師匠と弟子が暮していた。

ある深い冬の夜、眠りで目覚めた弟子が泣いていた。
その姿を見た師匠が、奇妙に思って弟子に聞いた。

"武器 +15 強化に失敗する夢でも見たのか？"

"いいえ。"

"ユニーク神石を 1 ギーナで委託販売する夢でも見たのか？"

"いいえ。ただ..."

"アラカ 3人パーティーに行く夢を見ました。"